2017年06月07日

蒲地明弘 日本神話は火山から始まった?


こんばんは。


  地球温暖化はデッチ上げだ。


  トランプ大統領の過激な発言は、地球温暖化を緩和しようとする国際的な枠組みを台無しにする非科学的で身勝手な主張です。


  確かに地球は46億年の歴史を持ち、その間には温暖化と寒冷化を繰り返してきました。そこでは何万年周期で氷河期があり、氷間期には生物たちが大きく進化した歴史があります。現在は、地球自体が温暖化に至る時期であり、近年の温暖化は長い歴史の中の一幕にすぎない、と結論づけることも可能です。


  しかし、科学的な統計データを見れば、産業革命以降に人類が地層に閉じ込められていた石炭や石油を掘り出して大量に消費することで二酸化炭素が増加し、太陽熱を防いでいたオゾン層を破壊していることが明らかです。過去1300年間とそれ以前の1300年間では、温度の上昇が急激に高くなっているのです。


  この100年間で地球の平均気温は0.6度上昇したと言われます。この数値を見るとその程度か、と思われるかもしれませんが、地球上の氷河や氷山が解けて水面が上がるには十分な気温上昇です。生物として考えると6.5℃の体温が7.1℃になれば微熱状態となり朦朧となるのです。


トランプパリ協定01.jpg

(パリ協定離脱を発表するトランプ大統領 chunichi.co.jpより)


  植物の進化と繁栄により地球の二酸化炭素は光合成による吸収で均衡を保ってきました。ところが石化エネルギーを人類が消費することにより、植物が吸収する以上に二酸化炭素が増加し、地球の気温上昇はこれまででは想像できない速度で上昇しているのです。このまま二酸化炭素等を排出し続ければ、2100年には最悪の場合4.8℃も平均気温が上がるという報告もなされています。そうなれば、現在の海面は82cm上昇することになり、多くの陸地が水没することになります。


  人間を含む生物も、その温度では生息することが難しくなるのではないでしょうか。


  トランプ大統領が脱退を表明したパリ協定は、産業革命以前に比較して地球温暖化を2℃未満に抑えようとする国際的な枠組みです。それに背を向けたトランプ政権は、地球の未来に背を向けたことになるのです。


  さて、日本はこの目標を1.5℃未満とすることに努力すると表明し、二酸化炭素等の排出抑制に技術力を持って挑もうとしていますが、温暖化の問題とともに日本にとって喫緊の問題となっているのは地震や噴火を始めとする天変地異です。日本は、世界でも有数の火山地域であり、それに伴う活断層やプレート移動による地震の発生が大きなリスクとなっているのです。


  阪神淡路大震災、東日本大震災など、大きな地震が起きるたびに日本では建築基準法や耐震基準が見直され、生命を守る方策を政府、自治体、企業が真剣に検討しています。地震はもちろんですが、日本では火山の噴火による被害も懸念されています。


  小笠原諸島内の無人島西之島の噴火は、新たな島がどんどん大きくなるという噴火の神秘を垣間見るような現象です。201311月に噴火により生まれた島は、1年後には東京ドームの40倍にまで面積を広げ、日本の領土拡大へとつながるような勢いでした。ここ数年、噴火は続いており、島はついに3㎢まで拡大しています。


  近年では、阿蘇の噴火、箱根の噴火、御嶽山の噴火と火山の歴史から見れば小規模であってもその威力には想像を絶するパワーを感じます。


  今週は、そんな日本の巨大噴火から古代の神話を見直そうという本を読んでいました。


「火山で読み解く古事記の謎」(蒲地明弘著 文春新書 2017年)


【火山列島日本】


  火山と言えば、以前読んだ破局的噴火の本を思い出します。英語では「ボルケーノ」と呼ばれる巨大噴火は、地球のエネルギーが海底や地表で噴出する宇宙的スケールの大災害です。火山の話で必ず出てくるのがカルデラです。


  カルデラとは過去の噴火によってできた窪地のことを指しますが、その大きさは噴火の規模によって異なります。日本で観光地としても有名な阿蘇カルデラは、南北25q、東西18kmという巨大なもので、その中には街や農地、国道や鉄道までもが含まれています。有名な阿蘇の火口は、その中央に口をあけていますが、8万年前から現在まで活動を続ける最新の活火山です。


阿蘇カルデラ01.jpg

(巨大な阿蘇カルデラ  wikipediaより)


  以前ご紹介した本(「破局噴火  秒読みに入った人類滅亡の日」⇒クリック(高橋正樹著 祥伝社新書 2008年)では、破局的噴火によって日本が壊滅的な被害が起きる可能性があることが提起されており、その恐ろしさに震撼しました。


  そこでも紹介されていましたが、直近の日本で巨大噴火が起きたのは、7300年前の九州の鬼界ケ島(現在の薩摩硫黄島)周辺でした。その痕跡(カルデラ)は、東西21q、南北18qと推定されており、この噴火によって、九州地域の縄文時代の文化は壊滅したと考えられています。


  ちなみに噴火の規模は、噴火した火砕流の体積で表現されます。巨大噴火と呼ばれる噴火は、100立方km以上の噴出物が測定された場合をいうそうですが、このカルデラを形成した噴火の噴出量は170立方kmであり、まさに「スーパーボルケーノ」だったと言えます。


  1991年に起きた雲仙普賢岳の噴火では、43名もの人々が帰らぬ人となりましたが、この噴火での噴出物は5年間で0.3立方kmと言われているので、7300年前の鬼界カルデラを創った噴火はその560倍もの威力があった巨大噴火だったのです。その火山灰は、太陽を覆いつくしその火山灰は1200kmも離れた関東の地層からも出土しているそうで、まさに当時の日本に壊滅的な被害を与えたと想像できます。


【スーパーボルケーノの記憶】


  本屋さんでこの本を買った時には、古事記を研究する研究者か火山を研究地質学者による著作かと思いました。しかし、読んでみると著者の蒲池氏は元読売新聞の記者であり、この本はジャーナリストによる取材により結実した著作でした。どうやら日本の学界と呼ばれる世界では、古事記の神話が火山噴火の記憶をとどめている、との仮説は完全に亜流となっているようです。


  まずは、目次を紹介します。


1章 アマテラスと縄文時代の巨大噴火

2章 出雲――八雲立つ火山の王国

3章 縄文時代に出現した天孫降臨の山

4章 女神イザナミ――黄泉の国は火山の国か

5章 熊野――謎の巨大カルデラの記憶

6章 大地を鎮める王――永遠に遍歴するヤマトタケル

最終章 日本列島における火山の記憶


  さすが、元ジャーナリストだけあって、読み込んでいる資料はハンパではありません。地質学者の火山に関する資料から物理学者の資料まで、火山と古事記をつなげる資料に基づいて、みごとに状況証拠を積み上げていくプロセスは、スリリングで一気に最後まで読んでしまいます。


火山から読み解く01.jpg

(「火山から読み解く古事記の謎」amazon.co.jpより)


  古事記では、イザナギとイザナミの国産みに続いて、イザナミが火の神カグツチを生んだときのやけどによって亡くなります。イザナギは、今は亡きイザナミを恋い慕い、イザナミがいる黄泉代の国へと向かいます。黄泉の国でイザナミが「身を整える間、私を見ないように」と言ったにもかかわらず、誘惑に耐えかねたイザナギは後ろを振り向いて、その変わり果てた姿を見てしまいます。


  恥をかかされたイザナミは、黄泉の国の軍団と共にイザナギを八つ裂きとすべく追いかけます。この本の第4章では、この逃走劇が山の上から下界に向かって下り坂を急ぎ下っていく過程に着目します。イザナミが繰り出す軍団は、火口から流れ出した火砕流のようであり、まさに寓意が感じられます。


  さらに逃げおおせて現世へと戻ったイザナギが禊のときに目と鼻を洗います。火砕流に追いかけられたことによって硫黄の煙の影響でイザナギは目と鼻を洗わなければならなかったのでは?との仮説を投げかけます。そして、この禊から様々な神が生まれてくるのです。


  このときに右目から生まれた神がアマテラスオオミカミ、左目から生まれたのがツクヨミノミコト、そして、鼻から生まれたのがスサノオノミコトでした。イザナギは、アマテラスに高天原を、ツクヨミノミコトには夜の国を、スサノオノミコトには海の国を委任することとしたのです。


  この本の第1章は、このアマテラスとスサノオの神話がまさに7300年前の鬼界ヶ島大噴火の記憶を反映した物語であることを語っていきます。古事記神話に詳しい方はすぐにわかりますが、スサノオは、海の統治を断り、母イザナミがいる根の堅洲国に行きたいと号泣してダダをこねるのですが、その涙はすべてのものを破壊してしまいます。


  この涙の威力は、まさに噴火の時の火砕流を暗示するといいます。


  さらに、有名なアマテラスの天岩戸のエピソードです。高天原に来たスサノオの狼藉があまりにひどいためアマテラスは天岩戸の中に隠れてしまいます。するとあたりは漆黒の闇となり、神々はなんとかしてアマテラスを岩戸から誘い出そうと大騒ぎを繰り広げるのです。


  さて、漆黒の闇の出現は何を寓意したものなのか。皆既日食か冬の闇を象徴しているというのが定説ですが、蒲池氏はそこに無理があることを指摘します。皆既日食は短時間の現象であり、古事記の既述のように長い間闇が続くことはない。また、冬の暗さは長いが、神話のように漆黒となることはない。そこで出てくる仮説が巨大噴火による噴煙の影響です。


  長い時間漆黒のような闇が続くのは、火山灰による暗闇と考えるのが最も自然と言えます。


黄泉の国比良坂01.jpg

(黄泉の国の入り口ー出雲の黄泉比良坂 wikipediaより)


【神々の役割は鎮めと豊作】


  この本では、火山と神話の関係を表した文献として、物理学者の寺田寅吉氏の「神話と地球物理学」と早稲田大学の教授アレクサンドル・ワノフスキー氏の「火山と神話−古事記神話の新解釈」を引用していますが、この書はそれぞれ、昭和8年、昭和30年に上梓されたものです。


  日本の学界は、新たな仮説に対して極めて保守的です。かつて、梅原猛氏が古代史3部作を世に問うたときもその斬新さに、だれも本質的な論議を挑むことが出来ず、その論文の形態や重箱の隅をつつくような些末な間違いをあげつらい、異端として退けようとしました。


  同様に、これまで注目されることなく無視されてきた斬新な仮説ですが、神話の根本を日本の火山噴火の記憶と結びつけて本質論へとつなげようとする蒲池さんの論旨は面白く、また説得力を持っています。


  火山には、活火山、休火山、死火山との形態があり、火山はすべてを破壊し壊滅させた後には、その冷えた土壌に豊饒な恵みをもたらします。その姿は、まさにスサノオであり、アマテラスであるといえるのではないでしょうか。


  アマテラスオオミカミは天皇家の祖先となる神とされています。日本人にとって統治者に求められる力は、噴火を治め、民を慰める力と豊饒をもたらす力だったのではないか。火山の噴火はまさにそれが現実となったパワーであり、神武天皇へと続く神話にはそれを象徴する記述が幾重にも語られているように思えてなりません。


  皆さんもこの本で、日本神話のルーツともいえるワンダーを味わってみてください。古代神話が一味違って見えること間違いなしです。


  いよいよ関東地方も梅雨入りとなりました。うっとおしい日々が続きそうですが、一方で美しい紫陽花も満開の季節になります。体調を万全にして、楽しい毎日を送りましょう。世界卓球での日本の活躍はすばらしかった。東京オリンピックが楽しみです。。がんばれ、ニッポン!


  それでは皆さんお元気で、またお会いします。


本今回も最後までお付き合いありがとうございます。
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posted by 人生楽しみ at 21:57| 東京 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | 評論(その他) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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