2017年05月22日

町山智浩 映画と本と台詞の素敵な関係


こんばんは。


  昔は、いわゆるミニシアター映画もよく見ていましたが、今では時間に限りがあり、近くのシネコンで上映されるメジャーな映画しか見なくなりました。しかし、各シアターではアメリカ映画・ヨーロッパ映画を中心に心温まる映画や魔訶不思議な映画がたくさん上映されていて、時間が許せばぜひ見に行きたいといつも思っています。


  今週は、映画と本と台詞の関係を描いたとても面白い本を読んでいました。


「映画と本の意外な関係!」(町山智浩著 集英社エンターナショナル新書 2017年)


【マニアな視点からの映画評論】


  映画と言えば、「スター・ウォーズ」や「ハリー・ポッター」など、映画そのものの魅力を味わうために映画館に足を運ぶものですが、町山さんの評論は一味違います。


  この本のあとがきには、町山さんのマニアックな映画鑑賞方法が紹介されています。


  「たぶん自分は映画そのものより、映画について調べる方がもっと好きなのかもしれません。ひとつのセリフや描写の背景にあるものを知ろうとすると、思わぬ人物や作品や歴史的事実が浮かび上がり、そこから全く別の世界につながっていく瞬間がたまらないのです。」


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(「映画と本の意外な関係!」 amazon.co.jpより)


  この本は、著者が集英社の季刊雑誌「kotoba」に連載していた映画のエッセイを集めた本です。私もこの本を読んでから初めて知ったのですが、この雑誌は、小説・フィクション以外のすべての本に関する記事を紹介し、文字や文章の意味や魅力を再認識するために編まれた雑誌なのです。


  例えば、最新号では「このノンフィクションが凄い!」と題された特集が組まれており、あの沢木耕太郎さんとノンフィクション作家梯久美子さんの対談や国分拓さんへのインタビューが掲載されており、思わず読みたくなります。さらには、ノンフィクション作家の様々なエッセイや文章がたくさん掲載されており、ノンフィクション作品のオススメも掲載されています。


  こうしたノンフィクションの言葉にこだわった雑誌に連載されているだけのことはあり、この本で紹介される映画の数々と本の関係はワンダーの連続です。紹介されている映画はなかなか玄人向きの映画ですが、中には、「007 スカイフォール」やスピルバーグの「リンカーン」、「恋人たちの予感」などがちりばめられています。


【映画「SING」を見てきました】


  映画の本の紹介ですが、先日見てきた映画をついでにご紹介します。


  その映画は、「SING」です。制作は、「ミニオンズ」や「ペット」などを手掛けたイルミネーションスタジオ。本当に面白い映画でした。映画情報は以下の通り。


・作品名:「SING」(米・108分)(原題:「Sing」)

・スタッフ  監督・脚本:ガース・ジェニングス

・キャスト(日本語吹替え版)

      バスター・ムーン:内村光良  アッシュ:長澤まさみ

      ミーナ:MISIA  ジョニー:大橋卓弥

      グンター:斎藤司  マイク:山寺宏一

      ロジータ:坂本真綾 ナナ・ヌードルマン:大地真央


  この映画の面白さは、とにかく楽しめることです。音楽好きの人には、スティービー・ワンダーやレディ・ガガをはじめとして数々の名曲がちりばめられており、108分間の間に何度も音楽的感動を味わうことが出来ます。ちなみに、映画では、たくさんの動物たちが我も我もとオーディションにつめかけるシーンを点写で見せてくれるので、曲数はなんと85曲にもなるそうです。


  洋楽ファンの私としては、ぜひ字幕版でみたかったのですが、おそらく配給会社の求めに従ってロードショウの後半には字幕上映の映画館が数少なくなり、吹替え版で見るしか選択がなくなっていました。しかし、さすが音楽がメインの映画であり、吹替え版でも音楽の素晴らしさは損なわれることなく、とても感動しました。(以下、ネタバレあり)


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(映画「SING」soundtrack  amazon.co.jpより)


  この映画は、父親が洗車業でコツコツと資金をため、ついに息子のために開いた劇場が舞台となります。しかし、劇場はいつも閑古鳥が鳴いており、オーナーのコアラであるバスター・ムーンは借金の返済に追われる毎日を送っています。内村さん演ずるバスター・ムーンはとにかく前向きで明るい性格。どんなに危機が訪れても、持ち前の明るさと未来志向で相対していきます。


  しかし、お金がなければ話にならず、ムーンは起死回生を狙って、市井の人々の中から選りすぐりのシンガーたちによるのど自慢大会の開催を企画するのです。


  この映画の面白さは、音楽と共にそのオーディションに応募してくる動物たちのキャラクターとドラマが個性的で際立っているところにあります。ピンクのブタさん、ロジータは何と25人(匹?)の子豚を育てている主婦。だんなはいつも疲れているサラリーマンで、家のことはすべてロジータまかせ。そのロジータが家を留守にしてオーディションへと出かけられる訳は?


  ゴリラのジョニーは、歌が大好きな青年。しかし、父親は名うての強盗であり、ジョニーは真面目に?父親の家業を手伝っています。しかし、オーディションの日と、大きなヤマが重なってしまうのです。ジョニーは逃走用の車の運転手。はたして、その結末は?


  その他にも、ボンクラのロック兄ちゃんの恋人であるヤマアラシのアッシュ、歌を心から愛すれど、あまりにも内気な性格からオーディションさえ受けることが出来ないゾウのミーナ、音楽大学を卒業し、ジャズのストリートミュージシャンを続けるギャンブラー、ハツカネズミのマイク。そして、往年の大スターで大金持ちの歌手ナナ・ヌードルマン。


  こうした人たちが織りなす奇想天外な物語が、心に響く名曲と相まって爽快なテンポで進んでいきます。そして、ラストの感動はすべての人の心にムーブメントを起こさずにはいられません。


  先日、かのポール・マッカートニーが2年ぶりに来日し、2時間を超える素晴らしいライブを聞かせてくれました。74歳、恐るべし。最近のポールのライブでは、アンコールの最後に必ず「アビーロード」のラストメドレーをタイトなノリで披露してくれ、我々を感動へと導いてくれます。その始まりの名曲「ゴールデンスランバー」。この映画でもその名曲が大きなカギとなっています。


  さて、この映画は間違えなく吹替えに成功した映画ですが、やはりオリジナルのスカーレット・ヨハンソンの歌もぜひ聞いてみたいものです。DVDが出たら手に入れて、オリジナルの感動を味わいたいと思っています。音楽好きの方もそうでない方も、この映画はオススメですので、ぜひ一度ご覧下さい。すべてを忘れて楽しめます。


【映画には「想い」がある】


  さて、話が脱線しましたが町山さんの本の話に戻ります。


  この本では、1章にひとつの映画を中心に4ページほどの映画にインスパイヤーされてのウンチクが語られていきます。まえがき、あとがきでは、複数の映画が語られていますが、それを除けば、22章の文章で構成されており、それだけの数の映画に関するうんちくが語られていきます。


  ただし、この本のコラムの雑誌連載時の題名は「映画の台詞」。本の題名とコラムの内容とはちょっと離れており、こだわると違和感があります。もちろん、本や詩からインスパイヤーされた映画の内容も語られており、「本」にこだわらなければ、ワンダーなウンチクの宝庫です。


  原則11本の構成ですが、時々例外があります。例えば、「007 スカイフォール」の章では、「ゴールドフィンガー」を始めこれまでの数々の作品のボンドのせりふから、ちょっとエロティックな会話がいくつも紹介されています。さすがエロティックと言えども、ボンドですからその言葉はとてもオシャレです。


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(「007 スカイフォール」ポスター)


  また、最近の作品では、シリーズの題名は原題がそのまま使われています。「ムーンレイカー」や「リビング・デイライツ」、「トゥモロウ・ネバー・ダイ」など、そこに込められた寓意は、英文学の知識がなければとても理解できないのですが、町山さんはその意味を語ってくれます。ちなみに「スカイフォール」は、かの「ユリシーズ」からのMの引用が象徴的だ、との指摘は奥が深く、ワンダーです。


  22の章はいずれも町山さんのあふれ出るようなうんちくが語られているのですが、第13章の映画には驚きました。それは、2013年に公開された「ビフォア・ミッドナイト」です。この作品は恋愛映画ではありますが、なんと18年間続いている3部作の最新作なのです。最初の映画は1995年に公開された「恋人までの距離(原題:ビフォア・サンライズ)」でした。


  この作品は、ヨーロッパの長距離列車の中で偶然出くわしたアメリカ人学生のジェシーとフランス人の女子学生セリーヌが意気投合して、ウィーンの街を一晩中歩き回るという映画です。二人の会話のみで成り立っている映画は、赤い糸で結ばれた(と想わせる)若い二人が純粋なるがゆえになかなか踏み出しきれないもどかしさが自然に描かれているのです。


  そして、2004年。9年後に制作された映画が「ビフォア・サンセット」。前作のラストシーンは、二人が半年後の待ち合わせを約束して、それぞれの場所に向かっていく姿です。監督は、前作同様にリチャード・リンクレイターです。キャストは、9年前の作品と同じイーサン・フォークとジュリー・デルビー。9年後の二人は果たしてどのような人生を歩んでいたのか。


  脚本も監督と同じリンクレイター氏ですが、町山さんはこの物語は監督が過去に経験した実際の出来事を基にしていると明かします。2作目の映画で、ジェシーは9年前の体験を小説として発表し、ベストセラー作家となっています。そのサイン会に出かけてきたセリーヌ。このあたりは、まさに映画と本の意外な関係、ですね。


  そして、この映画から9年後の2013年に公開された映画が、「ビフォア・ミッドナイト」なのです。最新作でもスタッフとキャストは変わりません。ただ、18年と言う年月が二人の物語を形作っているのです。学生時代に20代前半で運命の出会いを経験した二人が40代になったとき、そこに待っていたものは何か。二人がいる風景と二人の会話が物語を綴っていくのです。


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(「ビフォア・ミッドナイト」DVD  amazon.co.jpより)


  この本で初めて知った「ビフォア」3部作。是非とも見てみたい映画です。


  この本には、その他でも人種差別の心の歌声を行動に変えていったニーナ・シモン話、アメリカの心の詩であるホイットマンと内省の詩人ディッキンソンの話、はたまた冗談や小話で笑っていなければ死んでしまうかもしれないリンカーンの話、などなどくめども尽きぬ、映画と本とセリフの話が詰まっています。皆さんもこの本で、未知の映画の世界を味わってみてはいかがでしょうか。すぐに見たくなる映画が満載です。


  そういえば、ブルース・ウィルスが主演したサイレントホラーの「シックス・センス」を覚えているでしょうか。そのシャラマン監督が完全復活した、と言われているホラー映画が今話題になっています。その題名は「スピリッツ」。なんと23人格を持つ男に関する恐ろしい映画だそうです。ちょっと見るのが恐ろしい気もしますが、あの「シックス・センス」の大どんでん返しを思い出すと、ぜひ見てみたいと思いませんか。


  映画は本当にワンダーを醸し出す、素晴らしい芸術ですね。面白い映画のネタは尽きません。



  5月というのに真夏日が続く、驚きの天気となっていますが、皆さん、体にはくれぐれもご自愛ください。


  それでは皆さんお元気で、またお会いします。


本今回も最後までお付き合いありがとうございます。
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posted by 人生楽しみ at 20:32| 東京 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | 評論(映画) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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