2017年05月14日

田口壮 プロ野球二軍を想う


こんばんは。


  今年は、3月にワールドベースボールクラシックがあり、野球ファンには嬉しいオフとなりました。


  結果は、準決勝で多くのメジャー選手をそろえたアメリカチームに惜敗しましたが、1次リーグ、2次リーグを不敗で勝ち進んだ勝負強さにファンは完全に魅了されました。準決勝は、雨の中で慣れない自然芝が日本の足を引っ張る形となりましたが、日本の実力は決してアメリカに劣っていないことが目に見えた素晴らしい試合だったと思います。


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(チームを準決勝へ導いた小久保監督 aroundtherimgs.jpより)


  それにしてもメジャーリーガーの投手のツーシームの威力は絶大でした。それまでの試合では、筒香選手、中田選手、山田選手が数少ないチャンスをシュアなバッティングでものにして、本塁打を含めて得点を重ねました。ところが、準決勝ではロアーク投手の150kmを超えるツーシームやニシェク投手の変則投法から投げ下ろされる沈む球に翻弄され、自慢の打線も沈黙せざるを得ませんでした。


  メジャーリーガーである青木選手は、この結果を「野球とベースボールの違いが結果に表れた。」と語っていましたが、3Aから1Aまでを有するメジャーリーグの層の分厚さとハングリー精神は、日本の野球と環境が大きく異なることは間違いありません。


  しかし、攻守走というトータルの野球では、決して日本も負けてはいないと思います。


  今週は、昨年からオリックスの二軍監督に就任した田口壮氏の本を読んでいました。


「プロ野球・二軍の謎」(田口壮著 幻冬舎新書 2016年)


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(「プロ野球・二軍の謎」amazon.co.jpより)


【プロ野球人気の復活】


  Jリーグ発足以来、サッカーワールドカップでの日本代表の活躍もあり、プロ野球はサッカー人気の前に今一つ盛り上がりに欠けると感じていました。プロバスケット界は、一昨年来、2リーグ制の統合を果たせず国際バズケット連盟から国際試合への参加停止を言い渡される、という不名誉な事態に見舞われました。そこにJリーグを現在の隆盛につなげる基礎を築いた川渕チェアマンが救世主のように参戦し、アッという間にBリーグを立ち上げて日本のプロバスケットを救ったのです。


  川渕チェアマンが立ち上げたサッカーのJリーグとは、地域のプロサッカーチームとしてサポーターとJリーガーが一体となってサッカーを盛り上げるというコンセプトが中心となっていました。さらに、プロサッカーの仕組みとして、J1の下にJ2、J3を作り上げ、サッカー選手の分厚い層を作り上げました。逆にプロ野球は、戦前から国民に大人気のスポーツであり、その絶大な人気に乗っかって、何の工夫もないまま四半世紀を過ごしていたのです。


  地域のサポーターと選手の一体感で突き進むサッカーと旧態依然と試合を続けるプロ野球とでは、10年の間に大きな人気の差が出るのは当然のことでした。


  しかし、プロ野球も指をくわえて見ていたわけではありません。一流の選手たちが大リーグに挑戦していく中で、日本のプロ野球も再編の時期を迎えました。古くは、リース会社からプロ野球軍団を持ったオリックス、携帯電話サービスからコングロマリットへと成長したソフトバンク、インターネット企業として日本を代表する楽天、ゲームコンテンツやネットビジネスで急成長したDeNAなどが次々と球団経営に名乗りを上げ、プロ野球界に新風を巻き起こしたのです。


  特にパリーグでは、東日本大震災の後、東北楽天イーグルスが被災地の応援をバックに見事な活躍で優勝を果たしたことで、プロ野球が日本全体に勇気を与える結果となりました。(マー君の24連勝0敗もすごかったですね。)また、その後は、日本ハムの栗山監督がドラフト1位で獲得した大谷翔平選手の二刀流を宣言し、みごとに打者でも投手でも一流の成績で優勝に貢献したことも記憶に新しいところです。


  セリーグでは、昨年広島の優勝が地域の応援に一層拍車をかけましたが、パリーグでは、東北楽天、千葉ロッテ、所沢西武、神戸オリックス、北海道日本ハム、福岡ソフトバンクとすべてのチームが見事に地元に密着し、ファンを獲得したことが現在のプロ野球復活に貢献したのだと思います。


【今年のプロ野球は面白い】


  ところで、今年のペナントレースは非常に面白い。WBCに出場した選手でも明暗が分かれます。打者では、筒香選手、中田選手がWBCでの疲労があるのか、不振やケガで開幕からいまひとつですが、やっと調子が上がってきました。ヤクルトの山田選手も、3年連続3冠がかかった大事なシーズンですが、盗塁は順調なものの打率と本塁打はエンジンのかかりが遅れているようです。


  逆に巨人の坂本選手、広島の神っていた鈴木選手は、開幕から好調を維持しています。さすがです。ピッチャーでも巨人の菅野投手は先日まで3連続完封、ソフトバンクの千賀投手も好調です。楽天の則本投手は、4試合連続で10奪三振を達成し、順風満帆です。


  セリーグは、阪神、広島、巨人が三つ巴の戦いを繰り広げており、毎日の試合が楽しみです。ヤクルトファンとしては、投手陣が小川投手を筆頭にあまりピリッとしないこと、バレンティンに勝負強さが見られないことなど、心配の種が尽きません。


  一方のパリーグは、二刀流の大谷選手がケガのためにWBC出場を見合わせ、打者として開幕戦を迎えましたが、残念なことに再度ダメージを受けて、現在治療に専念しています。日本ハムではWBCに出場した中田選手も故障により戦列を離れ、開幕後に10連敗という最悪の結果となっています。一時は最下位に位置していましたが、若手の台頭により何とか5位をキープしています。


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(リハビリに励む大谷選手 yahoo.jpより)


  今年は、2年目を迎えた梨田楽天がルーキー、若手とかつて優勝に貢献したベテランの歯車がガッチリとかみ合い、みごとに首位をキープしています。梨田監督は、かつて近鉄でも日本ハムでも2年目に優勝を果たしており、その手腕に大きな期待がかかります。開幕当初は、今回ご紹介する本の著者田口壮氏が二軍監督を務めるオリックスは、開幕からT-岡田選手、糸井選手、金子投手などの大活躍によって勝ち続け、楽天とつばぜり合いを演じました。


  今年もペナントレースは残り100試合目が近づいて、その面白さにますます目が離せない展開となっています。


【マスコミが語ることのない二軍】


  プロ野球の話になると歯止めがきかず、つい前置きが長くなりました。


  2016年のシーズンから田口壮氏が神戸オリックスバッファローズの二軍監督に就任しました。氏は、大リーグから帰国してから3年間NHKで野球解説を勤めてきましたが、日本のプロ野球と大リーグで活躍した経験をもとに、現場に即したシャープな解説が持ち味でした。二軍監督に就任してからは、日本経済新聞社の日経電子版に監督日記を連載しており、文章を綴るのも苦にならないのか、と驚きました。


  その氏が、プロ野球の二軍を語る本を出したとのことで、本屋さんで見つけた時にそのまま購入した次第です。


  その内容は、


はじめに

第1章 プロ野球の二軍は何をしているのか?

第2章 日本の二軍とアメリカのマイナー

第3章 二軍の試合が100倍面白くなる!?観戦ガイド

第4章 新人監督のマンスリー・ダイアリー

第5章 二軍監督という仕事

おわりに


  田口壮さんと言えば、1991年に当時のオリックス・ブルーウェイブにドラフト1位で指名され、入団するや一軍でプレーし、その後、パリーグ連覇を果たした立役者として記憶に残っています。ちなみにあのイチローとは同期入団で、イチローは、鈴木一朗としてドラフト4位での入団でした。


  1995117日。恐るべき阪神淡路大震災が日本を襲いました。当時、神戸は壊滅状態となり、多くの人たちが崩壊する家屋の下敷きとなり、火災に巻き込まれてなくなりました。神戸に本拠地を持つブルーウェイブは、「がんばろうKOBE」を合言葉に被災地の復興と被災者とともに戦うことを目指し、1995年、1996年のシーズンで見事連覇を果たし、被災者に勇気を送りました。


  田口選手は、入団当時にはショートを守っていましたが、内野では送球難に悩まされ外野にコンバートされました。優勝のシーズンの外野手は、田口壮、イチロー、谷佳知の黄金のトライアングル。球界一の外野陣と言われ、鉄壁の守りを誇ったのです。


  そして、2002年には、FA宣言により大リーグへと渡り、セントルイス・カージナルスと契約し、6年間同球団に所属。その後、フィラデルフィア・フィリーズ、シカゴ・カブスでプレーの後、オリックスに戻り、2012年に引退しています。その野球解説は、さすが両リーグを経験しただけあって、分かりやすくとても面白いものでした。


  そんな田口氏がオリックスの二軍監督として、プロ野球の二軍とは何か、を語ってくれるのがこの本です。


2016 田口監督就任01.jpg

(田口監督就任時の記者会見 baffaloes.co.jpより)


  この本には、田口監督の日本のプロ野球にかける想い、オリックス・バッファローズにかける想い、そして、自分の配下にある若い選手たちへの熱い想いがめいっぱい詰まっています。


  日本のプロ野球で一軍の選手として出場選手登録ができるのは、最大28名だそうです。そして、その中で実際にベンチ入りする選手は25名なのです。(3名は、中3日を開けるためにベンチ入りしない投手が登録されています。)各球団の支配下登録選手は、70名だそうなので、二軍は、70名から一軍の28名を引いた42名で成り立っているということになります。そして、そこには登録選手以外の育成選手枠がプラスされるわけです。


  プロ野球の二軍は、一軍のセ・パとは違い、東のイースタン・リーグと西のウェウタン・リーグに分かれ、3月から9月にかけて130試合が行われることになります。そして、7月には一軍のオールスター戦に当たる「フレッシュ・オールスターゲーム」が行われて、時代を担うスター選手の卵たちが、東西に分かれて戦うことになるのです。


  田口さんは、新米の二軍監督として、プロ野球界での二軍監督の役割を実際の現場に即して、時にはシビアに、時には面白おかしく解説してくれます。


  例えば、第2章で語られるプロ野球の二軍とアメリカマイナーリーグの比較論は、両リーグを経験した田口監督ならではのシビアな指摘にあふれています。二軍に42名+育成選手を抱える日本と比較すると、アメリカは、3A、2A、1Aと3階級のチームがあり、いわば4軍までが存在する分厚い組織となっているのです。(さらにその下には、ルーキーリーグと呼ばれる組織があります。)


  メジャーに所属する選手は40名。3Aには38名、2Aには37名。1Aには105名。日本の70名に比べると220名に上る数の選手がメジャーリーグのチームを構成していることになります。そこでしのぎを削る選手たちの現実は、日本に比べると比較にならないほど過酷です。


  その中を生き抜いてきた田口さんの解説はとても分かりやすいのですが、その語っている中身は恐ろしいほどシビアです。そこを生き抜いてメジャーを勝ち取ってきた田口さんとそれを支え続けた奥様の努力には頭が下がります。(この本でも、田口さんが引退するときに、奥様は「これで毎日のマッサージから解放される」とホッとしていた、と紹介されています。)


  その他にも、この本には新米2軍監督田口壮が感じて、書き綴ったメッセージと自らへの叱咤激励がたくさんちりばめられており、野球ファンには、これまでにはないワンダーを届けてくれます。皆さんもぜひこの本で未知なる二軍のワンダーを味わってみてはいかがでしょう。野球が2倍楽しくなること間違いなしです。


  久しぶりに、ワンダーで面白い野球本を読ませてもらいました。5月に入って、オリックスの快進撃も一休み。勝率も5割を切ってしまいました。しかし、今の福良監督と田口さんは、ともに「がんばろうKOBE」を掲げて優勝した1995年当時の仲間です。そうした意味で、今年はあの強いオリックスの再来を期待できるのではないでしょうか。楽しみです。


  それでは今日はこの辺で。皆さんどうぞお元気で、またお会いします。


本今回も最後までお付き合いありがとうございます。
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posted by 人生楽しみ at 17:54| 東京 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | スポーツ本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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