2013年09月18日

古代ギリシャ アンティキテラの謎とは!


こんばんは。

  ヤクルトのバレンティン選手がついに1シーズンのホームラン日本記録を塗り替えました。

  9
15日日曜日、第一打席で新記録となる56号ホームランを放ち、第二打席では二打席連続となる57号ホームラン。ここまでホームランを量産してきたバレンティン選手の本領を発揮した連続ホームランでした。

バレンティン56.jpg
(56号ホームラン バレンティン選手 gigazine.netより)


  思い起こせば、世界の王選手が1シーズン55本塁打の記録を打ち立てたのが昭和39年のこと。今回の新記録は49年ぶりの快挙となりました。しかし、これまでの歴史の中でこの記録は2人の外人選手に並ばれています。一人は、2001年の近鉄ローズ選手。2003年には西武のカブレラ選手が同じく55本のホームランを放ち、記録に並んだのです。

  ヤクルトファンとしてバレンティン選手の偉業に胸のすく思いがしますが、今回の新記録には別の感慨もわいてきます。というのも、過去のローズ選手、カブレラ選手が記録に並んだときにも新記録樹立が期待されていましたが、当時は「王選手」の記録を外人選手が上回ることに嫉妬する気持が日本人の中にあった気がするのです。

  当時、両選手が55号を放って記録に並んだあと、二人の打席ではフォアボールで歩かされる場面が多くなった、と言います。2選手ともコメントの中で日本ではこの記録を抜くのは難しい、と語るなど、暗に外国人選手による新記録を望まない人々の声を感じていたようです。当時、こうした状況の中に日本人の狭隘な心根を感じたのは私だけでしょうか。

  今回の新記録は阪神戦で達成されましたが、ヤクルトファンの大きな歓声はもちろんですが、記録を達成したあとにあの阪神ファンが、「バレンティン万歳」と両手を挙げていた映像に心から感動しました。また、記録達成のホームランボールを拾った阪神ファンの男性が、ボールをバレンティン選手に手渡したときに、「その人柄の素晴らしさに、バレンティン選手のファンになりそうです。」と語り、これまた嬉しくなりました。

  大リーグで活躍する野茂選手、イチロー選手、黒田選手、上原選手、ダルビッシュ選手の活躍のおかげもあり、日本の野球ファンも日本という国を超えて記録を喜び合う精神を身に着けたのかと思うと感慨もひとしおでした。

  あまりに嬉しくて、つい本題からそれてしまいました。

  今週は、100年以上前に地中海のアンティキテラ島の沖合で発見された謎の機械に関する本を読んでいました。2000年以上前に難破して沈んだと思われる古代船から古代ギリシャの彫刻などとともに引き上げられた小さな木箱の中に見つけられた金属の破片。2000年以上海底に眠っていたために、その腐食は著しかったのですが、その破片は明らかに高度な技術に裏打ちされた多数の歯車によって構築された機械だったのです。

「アンティキテラ 古代ギリシャのコンピュータ」
(ジョー・マーチャント著 木村博江訳 文春文庫 2011年)

【古代文明に秘められたロマン】

  昔、まだ学生だったころ。怪獣や恐竜と同時に大いにロマンを感じたのが、失われた古代文明に関する著書でした。角川文庫で「未来への記憶」(エーリッヒ・フォン・デニケン著)を読んだときにはその面白さに夢中になりましたが、当時は「ノストラダムスの大予言」(五島勉著)がベストセラーとなっておりちょっとしたオカルトブームでもあり、この本はベストセラーとなったようです。

  この本は、旧約聖書に古代に地球にやってきた宇宙人と思われる姿が描かれていることから始まり、地球上の様々な伝承や遺跡を取り上げて、超古代に宇宙人が地球に訪れて現代につながる人間の進化を促し、様々な技術をもたらしたと述べていました。

  皆さんは、「オーパーツ」という言葉をご存じでしょうか。

  「オーパーツ」とは、「アウト・オブ・プレイス・アーティファクツ」という英語の省略語です。そのまま訳すと「場違いな工芸品」という意味になります。この言葉は、遺跡や発掘された遺物が、見つけられた場所や時代と合致していない場合に使われます。例えば、インドのデリーにある1500年以上前の鉄の塔が未だに錆びずに存在している不思議。15億年前の地層から出土した金属製のボルト。古代マヤ文明の石棺に刻まれた宇宙船に乗る宇宙飛行士としか見えないレリーフなど、その時代ではあり得ない技術で作られた遺跡や遺物のことを指す言葉です。

  デニケン氏はこの本の中で、こうした「オーパーツ」の実物を描いていくことで、超古代に宇宙人が地球にやってきたとの仮説を語っていきます。あの有名なナスカの地上絵も地上ではただの線にしか過ぎませんが、はるか上空から見る者だけがその絵の全貌を知ることができるのです。この絵は宇宙からの来訪者へのメッセージであり、着陸地点を示す滑走路であったかもしれない。次々に登場するオーパーツに圧倒されて夢中で読んだことをよく覚えています。

  これ以前にも古代に謎のムー大陸やアトランティス大陸など、超古代の謎には大いにロマンを感じていましたが、現実にある「オーパーツ」を示して語られる壮大な仮説には興奮させられました。そして、このアイデアは様々なフィクションの原型となり、SFでは定番のアイデアになったのです。

  アーサー・C・クラーク氏の2001年宇宙の旅」では、謎の物体モノリスが宇宙空間を浮遊して、古代から人類を進化の道へと導くことになります。また、横山光輝氏の「バビル2世」という傑作マンガも、古代、地球に飛来した宇宙人の子孫が現代社会で蘇り、祖先が残してくれた3つの使徒を使って地球の平和を守るというストーリーで大ヒットしました。最近では、あの「インディー・ジョーンズ クリスタル・スカルの王国」2008年 アメリカ映画)もそのエンディングでは超古代の宇宙船が登場しました。

インディクリスタル01.jpg
(クリスタル・スカルの王国 サントラ盤 hmv.co.jpより)


【アンティキテラのオーパーツ】

  アンティキテラ島の沖合で古代の沈没船から引き揚げられた「機械」は、現在、アテネ国立考古学博物館の一隅に展示されています。それが収められていた木箱(海底で2千年も経たために箱は朽ちていましたが)の大きさは分厚い辞書程度だと言いますから、さして大きな機械ではありません。しかし、精緻な歯車や円盤、そして判読できない文字群などを見るとそれは現在の懐中時計の内部を連想させます。

  「自動巻きの懐中時計」。それは、人類が産業革命をもって手にした精緻な技術の成果物として現代社会に普及したしろものです。これまで、古代文明には精緻な歯車を多用した計算装置は創られていなかったと考えられていました。この遺物は、自動計算を行う装置なのか。現在のコンピュータにあたる装置なのでしょうか。

  1900
年。産業革命によって発明された宇宙服のような重たい潜水服は、ギリシャの海綿取りの漁師たちにこれまで潜ることのできなかった深海での豊かな収穫をもたらしました。(この潜水服は、映画「ゴジラ」のラストシーンでオキシジン・デストロイヤーを手にゴジラの眠る海底に潜る芹沢博士が身に付けていた潜水服の原型です。) アンティキテラ島の沖合で海綿を取ろうとおの潜水服を身につけて潜った漁師は、海底にブロンズの像や馬が乱立している姿に驚きます。

  そこからあがったブロンズの片腕は、この海底に古代ギリシャ・ローマ時代の美術品を運んだ船が沈没していることを物語っていました。そうして、この貴重な情報はアテナ大学へともたらされ、当時のギリシャ政府はこの沈没船に眠る品々を引き揚げる作業を開始したのです。そして、その遺物たちの中から、「アンティキテラの機械」は、2千年以上の時を経て我々の前にその姿を現しました。しかし、その腐食はすさまじく、残念ながら古代に見せていた完全な姿かたちは想像する以外ありません。

  古代の世界にはあり得ない技術によって制作された機械。それは、「オーパーツ」そのものでした。精緻な歯車を組み合わせて、壮大な何かを計算して示したと想像される機械の謎は、発見から100年以上の間、我々人類を魅了し続けてきました。謎があればその謎ときに魅入られる人間が出てきます。

  この本は、アンティキテラの機械の発見からその謎が解けるまでの110年の間、その謎に挑んできた人々の謎ときの記録です。

【アーサー・C・クラークの言葉】

  この本には、アンティキテラの機械に魅入られたたくさんの人々が登場します。SFの巨匠アーサー・C・クラークもその一人。この本の巻頭には、クラークがこの本に寄せた言葉が飾られています。(大変悲しいことですが、氏は、この本が上梓される前、2008年に亡くなっています。)

  「2千年以上前のものと推定されるアンティキテラの機械。そこに使われているテクノロジーは、18世紀以降のものとしか考えられない水準である。まさしく歴史の基礎を築いた最大の機械発明に数えられるだろう。本書をきっかけに、いまなお正しい評価がなされていないこの古代の出土品に、再び関心が高まることを願ってやまない。」

  「いまなお正しい評価がなされていない」というクラークの言葉に、この本の面白さが象徴されています。というのも、複雑な歯車といくつもの金属盤、そこに記されたたくさんのギリシャ文字、さらには表と裏に歯車を利用して造形された複雑な構造。その技術はまさに現代の技術そのものと言えますが、最も大きな謎は「何の目的でこの機械が作られたのか。」なのです。

アンティキテラ02.jpg
(アンティキテラ島 謎の機械 gigazine.netより)


  それを正しく証明するためには、2千年の腐食にさらされてきたこの機械の構造をすべて明らかにする必要がありました。

  この本の主人公は「アンティキテラの機械」ですが、登場する人々は、110年間の間にめまぐるしく変わっていきます。まず、この機械を海底から引き揚げたディミトリオス・コントス船長、そして、文字盤の謎に挑んだアテネ国立考古学博物館館長ジョン・スヴォロノス、アテネ考古学協会の教授ペリクレス・レディアディス、ギリシャ海軍の准将ジョン・テオファニディス。果してこの機械は宇宙を表すものなのか、はたまた時計なのか。

  そして、この沈没船と木箱の建造年代が科学的に解明されますが、機械の謎は続きます。そこに登場するのがイギリスの科学者デレク・デ・ソーラ・プライスです。彼は1958年にギリシャを訪問し、このオーパーツと出会います。その運命的な出会いから彼は生涯を通してこの機械の謎ときに挑むことになるのです。そして、プライスが書いたアンティキテラの機械に関する論文を読んで、この謎に魅入られた男がその後を継いでいきます。彼の名は、ロンドンの科学博物館の研究員マイケル・ライト。

  マイケル・ライトとこの機械の謎ときは、数奇な人間模様を醸し出しながら現在へと続いていきます。ライトは、この機械の謎を解くためにシドニー大学の天文物理学者アラン・G・プロムリーにこの機械のX線による透視撮影を依頼します。しかし、この依頼がライトに大きな打撃を与えることになるのです。その顛末は・・・。

  さらに、21世紀。ここに新たな研究者が登場します。それは、高性能X線光源装置を開発した機械工学研究者ロジャー・ハドランドとその友人の数学博士トニー・フリースです。彼らは最新のハイテクを武器にアンティキテラの機械の謎に挑んでいきます。マイケル・ライト対トニー・フリースの謎ときはどちらに軍配が上がるのか・・・。

  アンティキテラの機械が醸し出すロマンの面白さもさることながら、この機械を巡る研究者たちの謎ときはまるで傑作ミステリー小説のように時間を忘れさせてくれます。そして、ノンフィクションはこのオーパーツの謎に肉薄していきます。


  科学ノンフィクションというと固い論文調の本を想像しますが、事実は小説よりも奇なり。この本は、まるで上質な小説のように我々を古代研究の世界へと導いてくれるのです。皆さんもぜひこの謎ときに加わってみてください。きっとアテネ国立考古学博物館にアンティキテラの機械を見に行きたくなるに違いありません。

  秋も深まってきましたが、まだまだ日中は残暑が続きます。皆さん、体にはくれぐれも気を付けて元気でお過ごし下さい。それでは今日はこの辺で。また楽しい本でお会いします。



本今回も最後までお付き合いありがとうございます。
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posted by 人生楽しみ at 21:30| 東京 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | ノンフィクション | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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